関町ニューウエスタン

③練習メニューの工夫

 

【前文】

 練習は日曜と祝日の34時間。東京都練馬区の少年野球チーム「関町ニューウエスタン」は、限られた時間を最大限に活用する方法を常に考えている。キャッチボールやティー打撃は5種類以上のメニューを組み、JSBB公認学童コーチの資格を持つ指導者が怪我を予防しながら最先端の理論を指導に取り入れている。

 

【本文】

 準備運動を終えた子どもたちが、4つのグループに分かれて列をつくる。グラウンドには、ノリの良い音楽が流れている。子どもたちは音楽に合わせながら、ジャンプしたり、体を捻ったりする。リズムトレーニングだ。

 

関町ニューウエスタンのウォーミングアップは体を温めるだけではなく、体の使い方や動きのバリエーションを身に付ける狙いがある。リズム感を高めて運動能力を向上させるリズムトレーニングも、その1つ。様々なリズムを体に刻むことで、例えば打者がタイミングを外されても投球に対応する効果が期待できる。その他にも、俊敏性を鍛えるアジリティトレーニングなども取り入れている。

 

 できるだけ効率的な練習メニューを組む理由は、練習時間が他のチームと比べて少ないからだ。土日祝日は丸一日練習するチームが一般的な中、関町ニューウエスタンは日曜と祝日の午前中34時間のみ。長時間練習による怪我のリスクを避けることに加えて、小学生世代は他の習い事や友達・家族と過ごす時間など野球以外の経験も大切にしてほしい思いがあるためだ。

 

キャッチボールは時間だけ見れば、他のチームと変わらない。ただ、片足立ちで投げたり、片膝をついて投げたり、メニューは豊富。試合では投げやすい体勢から送球する機会は少ない。キャッチボールでは肩を温める、正確に投げることに加えて、体勢が崩れてもボールをコントロールする体の使い方を練習している。JSBB公認学童コーチの資格を持つ石川誠監督は、練習の意図を説明する。

 

「選手の引き出しを増やすために、練習メニューを試行錯誤しています。小学生のうちは狙いが分からなくても、中学、高校と先のステージに進んだ時に役立てばと思っています」

 

 ティー打撃も7種類のメニューがある。正面からのトスを打ち返す通常の方法の他に、右打者なら左手を上にして逆手でバットを握ってスイングしたり、片手でバットを振ったり、ワンバウンドの投球を打ち返したりする。逆手打ちはヘッドが走る感覚を身に付け、ワンバウンドへの対応は間をつくる目的があるという。

 

 ノックではジャンピングスローや右利きの選手が右足を前に出した捕球も練習する。選手のプレーの幅を広げるためだ。石川監督は「子どもたちに強制はしません。自分に合ったやり方を見つけてもらいたいと考えています。他のチームより練習時間が短い中でも、選手が技術を身に付けて、試合でも勝てるチームを目指しています」と語る。限られた時間で最大の効果を生む練習方法を模索している。

 

(間 淳/Jun Aida

 

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